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福岡地方裁判所行橋支部 昭和45年(ワ)38号 判決 1973年3月15日

原告

岩男光治

被告

中村武明

主文

被告は原告に対し金六三、〇〇〇円を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

この判決の一項は仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求める裁判

一  原告

被告は原告に対し、金一、五三八、〇九八円およびこれに対する昭和四五年六月一二日以降支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

との判決並びに仮執行の宣言。

二  被告

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

との判決並びに被告敗訴の場合仮執行免脱の宣言。

第二請求の原因

一  本件事故の発生

昭和四四年五月二一日午後七時三〇分頃、福岡県田川郡香春町大字高野一、二一五番地の一先県道上において、被告はその運転する自動車(以下被告車という)の左側前照燈部分を、原告の運転する軽四輪乗用車(以下原告車という)のバツク燈上部車体に追突させ、その結果、原告に対し、同月二六日から六七日間の入院および同年八月二九日以降同年一二月一九日までの間通院実日数三四日の各加療を要する後突起骨折、鞭打ち損傷の傷害並びに労災保険障害等級一四級の九程度の後胎症を負わせ、また、原告車の後部右側車体を破損させた。

二  本件事故は、被告が、前記日時場所において、他車の通過待ちのため停車している前車である原告車の動静に注意を払わなかつた過失によるものである。

三  損害

1  原告車の修理期間中、被告の申入れにより代車を出してもらう代りに昭和四四年五月二一日以降同年六月三日までの間営業車を使用した代金を原告において立替えた分一二、八二〇円

2  診察料

イ 労災病院 四、八〇〇円

ロ 長尾病院 一一、一六〇円

ハ 日本セメント診療所 二〇〇円

3  診断書料

日本セメント提出分四通 八〇〇円

4  通院のための交通費 四、三六〇円

5  諸経費

イ 昭和四四年五月二七日から七月三〇日肉代 一、九一〇円

ロ 同年五月二八日から七月三〇日魚代 二、五六〇円

ハ 同年五月二七日湯沸六リツトル入 三九〇円

ニ 同年七月三〇日氷代 一、九五〇円

ホ 同年五月二六日から八月一八日牛乳代 二、二九五円

6  入院中の付添料

原告の妻八重子の付添料一日一、二〇〇円の六七日分 八〇、四〇〇円

7  休業損害

原告は、本件事故のため出勤できず、一二四、六五三円の賃金カツトを受け、また賞与四〇、〇〇〇円を減額された。

8  慰藉料

原告は、本件事故により、当時定年退職を間際にひかえ、予定していた退職後の観葉植物栽培および販売の計画がたたず、悶々のうちに日時を過し、肉体的精神的苦痛を受け、これを慰藉するには一、〇〇〇、〇〇〇円が相当である。

9  前記後胎症による損害として一五〇、〇〇〇円を請求する。

10  弁護士費用

原告は本訴の提起追行のため原告訴訟代理人に対し手数料一〇〇、〇〇〇円を支払つた。

四  よつて、原告は被告に対し、右三の損害合計一、五三八、〇九八円とこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和四五年六月一二日以降支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第三請求原因に対する被告の答弁

一  請求原因一項の事実中、原告主張の日時、場所において、被告が被告車を原告車に追突させたことは認めるが、右追突と原告の受傷との因果関係および傷害の程度については争い、その余は知らない。

二  同二項中、被告に過失があつたことは認める。

三  同三項の損害は知らない。慰藉料は争う。

四  本件事故の発生状況は次のとおりである。

原告主張の日時、場所において、原告車が一旦停車したのに続いて被告車も停車し、次いで原告車が発進したのでこれに続いて被告も発進したところ、原告が急停車したので、被告は停車措置をとると共に右に転把して追突をさけようとしたが、わずかに被告車の左前部が原告車の右後部に接触したものである。

両車の損傷程度は極めて軽微で、原告に負傷させるようなものではなかつた。

第四被告の抗弁

本件事故に関し、被告は次のとおり支払つている。

支払年月日(昭和年月日) 支払費目 金額円

1  四四・五・二三 タクシー代(香春―中津) 二、一〇〇

2  〃五・二四 同右(中津―小倉往復) 六、三〇〇

3  〃五・二四 治療費(北九州市立病院レントゲン料) 五、九四〇

4  〃五・二四 同右(同病院内服薬代) 一、三六八

5  〃五・二六 タクシー代(自宅―梶原外科) 五二〇

6  〃五・二六 雑品代 一、九六七

7  〃五・二八 診断書料 一〇〇

8  〃五・三〇 タクシー代(香春―中津サボテン運搬) 二、〇六〇

9  〃五・三〇 トラツク代(同右) 二、五〇〇

10  〃五・三〇 サボテン運搬人日当 一、〇〇〇

11  〃五・三一 トラツク代(香春―中津サボテン運搬) 二、五〇〇

12  〃六・一 治療費(梶原外科五月分) 三四、一八一

13  〃六・三 車両点検費(原告車定期点検) 八、七九五

14  〃六・一七 賠償金内金 六〇、〇〇〇

15  〃六・三〇 同右 五〇、〇〇〇

16  〃七・五 診断書料(市立病院) 五〇〇

17  〃七・一二 診療費明細書料(同右) 二〇〇

18  〃八・一一 車両修理費(原告車分) 一〇、九〇〇

第五抗弁に対する原告の認否

被告主張の弁済中、10は認め、14 15は否認する。

第六証拠〔略〕

理由

一  請求原因一項の事実中、原告主張の日時、場所において、被告が被告車を原告運転の原告車に追突させたことは当事者間に争いがなく、〔証拠略〕を併せ考えると、本件事故発生現場は県道小倉―日田線と国道二〇一号線とが交差する三差路の付近であるが、原告がその主張の日時右県道上を添田町方面から小倉区方面に向け、右国道上の車両通過待ちのため停車していたところ、原告車に後続して被告車(普通乗用自動車、トヨタパブリカ)を運転してきていた被告は、被告車を原告車と同方向に向け、約二・四メートルの距離をおいて右県道上で停車し、間もなく原告車が前方に発進し始めたと誤認して自己も被告車を発進させたため、停止中の原告車の右後部尾燈付近に被告車の左前照燈付近を衝突させ、原告車を約〇・五メートル前方に押出したこと、右追突により原告車は右後部尾燈の下部がくぼみ、被告車は左前照燈周囲のボデーがくぼんだこと、以上の事実が認められ、証人米丸造、原告本人尋問の結果中、右追突直後の原告車の状態に関する部分は、〔証拠略〕中、右認定に抵触する部分は採用し難く、他に右認定を覆えすに足る証拠はない。

右認定事実によれば、被告は、発進に際しては、前車である原告車の動静に注視し追突等の事故の発生を防止すべき注意義務があるのにこれを怠り、原告車が発進したものと軽信して慢然被告車を発進させた過失により(被告に過失のあることは当事者間に争いがない)本件追突事故を惹起したものということができる。

二  そこで次に本件事故による原告の受傷の有無程度について調べる。

原告は、本件事故により昭和四四年五月二六日より六七日間の入院および同年八月二九日より同年一二月一九日まで治療実日数三四日の通院加療を要する頸椎後突起骨折、鞭打ち損傷の傷害を受けたと主張し、〔証拠略〕によると、原告は、昭和四四年五月二六日梶原病院で診断を受け、原告主張の病名で主張のとおりの期間、同病院で入院、通院(但し通院実日数四〇日)各治療を受けたこと、右診療を受けた同年五月二六日当時、眼底、脳波および頭の出血の有無を調べる超音波各検査結果に異常はなかつたが、頸部の腫脹がある外、同部の圧痛、自発痛、運動障害、悪心、項部緊迫感があり(なお、めまい、しびれもあつた旨の証人梶原直の証言、原告本人尋問の結果部分は〔証拠略〕に照らして採用し難い)、入院当初三八度位の熱が続いたことは認められ、右認定を覆えすに足る証拠はない。

しかしながら、(一)まず鑑定人岩淵亮の鑑定の結果によれば、原告に頸椎後突起骨折(以下単に骨折という)があつた旨の〔証拠略〕は採用できず、右鑑定の結果によれば、右骨折はなかつたことが認められ、(二)続いて原告が本件事故後、梶原病院以外の病院で受けた診療経過をみるに、(1)〔証拠略〕によると、本件事故の翌日である昭和四四年五月二二日当時原告が勤務していた日本セメントの診療所での診断は、客観的検査はなされないままめまい、頭痛項部疼痛のある鞭打ち症で一カ月の安静加療を要するということで投薬したのみであることが認められ、(2)〔証拠略〕によれば、原告は右同月二四日北九州市立小倉病院で診察を受けその診断内容は頸椎の伸展症状、知覚障害に異常なく、神経根の異常の有無を調べるスパーリングテストも陰性であるが、頭重感、後頭神経圧痛頸椎の伸展右側屈に軽度疼痛のある頸椎捻挫として安静加療、経過視察に一〇日間を要するということであつたことが認められ、(3)〔証拠略〕によると、同年一二月四日九州労災病院では計算力低下、後頭神経の圧痛がある頭部外傷後遺症との診断を受け、(4)〔証拠略〕によると同年一二月一〇日長尾病院で、頭重感、めまい、食欲不振の愁訴があり、頸椎運動制限が正常の三分の二であり、年令相応の軽度の骨萎縮(粗鬆症)があり、労働保険障害等級一四級の九と認定されているが、根刺激症はなく、その他の神経系統は正常である旨の診断を受けていることが認められ(甲第一四号証の二中、右認定に抵触する部分は前掲甲第一四号証の一に対比し採用しない)(三)更に、前掲乙第一一号証と第一二号証の一、二とを対比すると前記日本セメント診療所と北九州市立小倉病院において原告が申立てた病状の発生時期にくいちがいが認められ、前掲甲第一四号証の一と乙第一三号証とを対比すると、期日を接して原告が後遺症の診断を受けた九州労災病院と長尾病院における診断内容にくいちがいがあることが認められ、〔証拠略〕によると原告には多少動脈硬化があり、頸部の圧痛も伴う骨粗鬆症の症状もあり、なお昭和四三年高血圧症の診療を受けたこともあることが窺われる。

右みてきた日本セメント診療所、北九州市立小倉病院における診断内容、梶原病院入院当時の原告の症状、〔証拠略〕をあわせると、原告は本件事故により頸部腫脹、発熱、頭重感、頸椎の疼痛、後頭神経圧痛などの症状のある鞭打ち症の傷害を受けたことまでは認められるけれども、これに必要な治療の程度や後遺症の点を検討するとき、原告に前記骨折が生じていることを前提としていると解される〔証拠略〕中、原告の治療に付添や入院を要し、かつ原告主張の治療期間を要した旨の各部分は直ちに採用できないし、前(二)で認定した日本セメント診療所および北九州市立病院での診断内容、証人和田宏の証言、前(三)の事実並びに前一項で認定した本件事故の態様に照らすと、原告には頭痛、頸椎運動制限、計算力低下などの後遺症があり、梶原病院に入院した昭和四四年五月二六日当時の鞭打ち症による症状中、頸部腫脹、発熱(これらは〔証拠略〕により入院当初のみの症状と推認される)以外の諸症状(いずれも原告の愁訴によるもので他覚的なものではないと考えられる)が真に右同日以降一カ月程度を経てもなお続いていた旨の原告の主張にそう〔証拠略〕はにわかに措信し難く、他に右主張を認めさせるに足る証拠や、仮に頭痛、頸椎の圧痛などが右入院後一カ月を経た後も残つていたとしても、同症状が本件事故による前記鞭打ち症によるものと断ずるに足る証拠はないのであり、右みてきたところに〔証拠略〕、本件事故の態様をあわせると、原告の本件事故に基づく鞭打ち症を治療するには、前記梶原病院に入院した昭和四四年五月二六日以降一カ月程度の通院(隔日)は要したとまでは認められるが、これを超える入院(付添も含む)、通院の必要があり、また後遺症がある旨の原告の主張は採用することはできないといわざるを得ない。

三  すすんで原告の損害について考える。

(一)  前一項で認定したように、本件事故により原告車は損傷し、〔証拠略〕によると、右の修理(後部板金塗装)に一週間を要したが、被告は本件事故当日原告に対し、右修理期間中原告やその家族が被告の負担において営業車を使用することを承諾していたことが認められ、〔証拠略〕によると、原告は昭和四四年五月二一日から同年六月三日まで一四日間営業車を使用し、その費用として合計一二、八二〇円を立替え支払つたことが認められ、そうすると、右一四日間の支払金一二、八二〇円中、前記修理期間一週間に対応する六、四一〇円を原告が立替金として被告に支払を求め得ることとなるが、その余は、原告車の修理期間を超えて営業車を使用した代金であつてこの支払分を被告に請求し得る根拠について主張立証もないので同請求部分は認められないこととなる。

(二)  〔証拠略〕によると、原告が前記九州労災病院での診察費として四、八〇〇円を、前記長尾病院での診察検査、診断書料として一一、一六〇円を支払つたことは認められるが(日本セメント診療所で診察費二〇〇円を支払つたとの主張については、これを認めるに足る証拠がなく、前認定の如く原告が同所で診察を受けたにしても、〔証拠略〕によると原告は右受診当時日本セメントに勤務していたと認められる点に照し、右診察自体から右支払を推認することはできない)、右二病院で診察を受けた当時原告に主張のような症状があつたと認められないこと前記のとおりであるから右診察料等の出捐をもつて本件事故による損害とは認め難い。

(三)  〔証拠略〕によると、原告は本件事故に関し検察庁に提出するための梶原病院の診断書(四通)料として八〇〇円を出捐したことが認められ、右は本件事故による損害と認められる。

(四)  原告は梶原病院退院後の交通費を請求し〔証拠略〕によれば、原告は右退院後右病院に通院するためタクシー代八回(一回往復三二〇円)分計二、五六〇円およびバス代三〇回(一回往復六〇円)分計一、八〇〇円は出捐していることは認められ、右は前認定の要治療期間経過後の通院費であるから右出捐そのものを本件事故による損害として認めることはできないけれども、前認定のとおり原告に要した治療は梶原病院入院時より一カ月の通院(隔日)というべきであるから、前記原告の出捐分四、三六〇円を右一カ月間に要したと考えられる通院費(梶原病院への右交通費タクシー一往復三二〇円の一五日分とみても原告の前記出捐分四、三六〇円は必要と考えられる)に流用し、同金額四、三六〇円を本件事故による通院に要した損害として認めるのを相当とする。

(五)  〔証拠略〕によると、原告は前記梶原病院に入院中原告主張のとおりの諸経費(請求原因三5)を出費したこと、右のうち氷代一、九五〇円は本件事故による損害と認められるけれども、右諸経費中右氷代以外については、右各証拠によると、入院のため要した雑費と考えられるので、本件受傷の治療のために入院が必要であつたとは認め難いとの前記認定によれば、右氷代以外の諸経費は本件事故による損害とは認められない。

原告主張の付添料についても、原告に付添が必要であつた旨の原告の主張にそう〔証拠略〕は前記認定した原告の受傷の程度からすれば採用し難く、他に右主張を認めさせるに足る証拠はないので、右付添料をもつて本件事故による損害と認めることはできない。

(六)  〔証拠略〕によると、原告は昭和四四年七月八日より同年八月一九日まで勤務先の日本セメント株式会社香春工場を病気欠勤して主張どおりの賃金カツトを受けたことが認められるけれども、右期間は、前記認定した本件受傷に対する要治療期間を経過した後のものであるからその間欠勤が已むを得なかつたものとは認め難く、従つて右期間の欠勤に対する減収分を本件事故と相当因果関係のある損害とはいい難い。

また、原告主張の賞与が四〇、〇〇〇円減額されたことを認めさせるに足る証拠はなく、仮に右減額がなされたとしても、弁論の全趣旨によると右減額は前記病気欠勤を理由とするものと認められる、そうすると前記賃金カツトに関する判断理由と同一の理由により右賞与の減額が本件事故による損害とは認め難い。

(七)  本件にあらわれた諸般の事情に鑑み、原告が本件事故により受けた精神的苦痛に対する慰藉料は一〇〇、〇〇〇円をもつて相当と認める。(なお、原告主張の後遺症を認め難いことは前記認定したとおりであるから、後遺症障害を前提とする原告の請求は認め得ない。)

四  被告の弁済の主張について審究する。

(一)  〔証拠略〕によると、被告は、原告が昭和四四年五月二六日自宅より梶原病院まで通院するのに要した交通費五二〇円を支払つたことが認められ、また、〔証拠略〕によると、被告は同年六月頃原告に対し本件事故による損害賠償金として六〇、〇〇〇円を支払つたことが各認められ、右認定を左右する証拠はない。

(二)  〔証拠略〕によると、被告は被告主張の弁済1ないし4 7を各支払つていることが認められるが、〔証拠略〕によれば、右出費は原告の本訴請求外の費用を被告が支払つたものであると認められるので本訴における原告主張の損害に充当することはできない。

被告主張の弁済6については、これが本件事故による原告の損害の弁済としてなされたと認めるに足る証拠はない。

被告主張の弁済10の支払がなされたことは当事者間に争いがなく、〔証拠略〕によると、被告は被告主張の弁済8 9 11の出捐をしたことは認められるが、以上はいずれも本件事故による原告の損害を弁済したものと認めるに足る証拠はない。

〔証拠略〕によると、被告は被告主張の弁済12 13 16ないし18の支払をしたことは認められるが、被告本人尋問の結果によると、右支払のうち16 17は被告自身の必要上取寄せた診断書料であつて、原告の損害に対する弁済ではないと認められ、その余の支払はいずれも原告の本訴請求外の損害費目に対してなされた支払であること〔証拠略〕から明らかであるから、本訴における原告主張の損害に充当できない。

被告主張の弁済15については、〔証拠略〕によると、被告が本件事故に関し示談交渉に関与した訴外米丸造を通じて五〇、〇〇〇円を原告に交付し、原告が数日後これを被告に返金したことは認められるが、原告本人尋問の結果によると右交付は被告において条件をつけてなした交付であると認められるので、債務の本旨に従つた提供とは認め難い。

(三)  右(一)(二)によると本件事故による原告の本訴請求損害については、被告から右(一)の合計六〇、五二〇円の弁済がなされたことになる。

五  右みてくると、原告は被告に対し、本件事故による損害として前三記載の合計一一三、五二〇円より前四記載の弁済方六〇、五二〇円を控除した残五三、〇〇〇円の支払を求め得るところ、成立に争いのない甲第一五号証、原告本人尋問の結果によれば、原告が本件原告訴訟代理人に本訴の提起追行を委任し、手数料として本訴提起までに一〇〇、〇〇〇円を支払つたことは認められるが、本件の経過、認容額等に鑑み、うち一〇、〇〇〇円をもつて本件事故と相当因果関係ある損害と認めるのが相当である。

六  以上の次第であるから、原告の本訴請求は、前五記載のとおりの損害合計六三、〇〇〇円とこれに対する本訴状送達の翌日であること訴訟手続上明らかな昭和四五年六月一二日以降支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において正当であるからこれを認容し、その余は理由がないので棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条但書を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用し、なお、被告の仮執行免脱宣言の申立については、相当でないから却下することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 武田多喜子)

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